IFCAは2018年5月、米国ワシントン州の非営利団体、モッキンバード・ソサエティと正式に契約を結んだことにより、日本にモッキンバード・ファミリー™を導入する中心的な組織として公認されました。これを受け、IFCAは、団体のケアギバー事業のひとつとして、モッキンバードファミリー・ジャパン [MFJ] という新たな プロジェクト・チームを結成しました。MFJは、自治体、里親家族、児童福祉の専門家と協力し、日本の社会的養護の改善・改革を目指しています。


厚生労働省は家庭養育を優先とすることを明言し、2016年5月に児童福祉法の改正を行いました。こうした政策の下、里親や委託されている子どもへの支援は年々増加し、里親家庭への子どもの委託率も上昇しています。その一方で、支援に関する課題や個別の家庭の抱える問題が次々と顕在化しているという現実があります。里親家庭における養育の質は、もはや看過できない課題です。   

里親への効果的な支援と子どもの安全な養育に対して、課題のひとつと考えられるのは、公的な支援機関と里親家庭の間にある単線的な関係です。これまで、公的機関(児童相談所や里親支援機関)は、里親家庭には一対一かつ一方向による支援を行ってきました。もちろん、ケースワーカーが各家庭を個別に支援することは必要ですが、それだけでは、公的機関と里親家庭の関係は、支援者と被支援者という関係を越えることができません。こうした中で、支援者の負担はますます増大し、被支援者の不安や不満はあまり解消しないという残念な状況が続いています。 

モッキンバード・ファミリー™️は、こうした課題を克服する可能性を持ちます。この仕組みでは、養育者同士、子ども同士が地域の小規模なネットワーク(6~10家庭)の中で、ベテラン里親家庭を中心として互いを支え合うことができます。そして、公的な支援機関は、中心の里親を通して、ネットワーク内のすべての家庭のより詳細な状況を把握することができ、いち早く問題を解決することができます。また、公的機関は、ネットワークそのものを支える役割を担うため、各家庭はベテラン里親家庭からも公的機関からも支援を受けることができます。グループ内の養育者は、親族のような親しい関係の中で安心して子育てを行うことができるだけでなく、相互扶助を行うことができるのです。米国や英国など、世界数カ国では、この仕組みを里親家庭の支援に用いています。仕組み自体は柔軟で、地域の養育に課題を抱える家庭の支援にも応用が可能です。私たちは、この仕組みの日本での導入と普及を目指して歩み始めました。

2018年の米国研修の参加者が中心となってモッキンバード・ファミリー™を使ったパイロット・プロジェクトを構築し、現在4つの地域でコンステレーションが運用されています。

  • 札幌市
  • 栃木県
  • 東京都
  • 福岡市

その他にも、いくつかの都道府県と政令指定都市がモッキンバード・ファミリー™の導入を検討・計画しています。


モッキンバード・ファミリー開始するまで のステップ

モッキンバード・ファミリー™についてのお問い合わせや地域でのモデルの導入に興味がある方は、下記までご連絡ください。私たちが、導入のサポートを致します。info@ifcajapan.org

モッキンバード・ファミリー™と私たちのあゆみ

2008年
5名によるシアトル視察研修実施(アレンジ:粟津美穂) ・モッキンバード・ファミリー™についての説明を受ける ・ハブホームの月例会に参加
2012年
IFCA 設立
2013年
7名によるシアトル視察研修実施(アレンジ:IFCA) ・モッキンバード・ファミリー™についての説明を受ける ・ハブホームの月例会に参加 ・モッキンバードの日本での実現についてのミーティング ・モッキンバード・ファミリー™で育った少年の経験を聞く
2015年
モッキンバード・ソサイエティでのフィールドワーク(調査者:和泉広恵) ・モッキンバード・ファミリー™の月例会、コンサルテーションミーティング、ハブホームミーティングや、スタートアップのミーティング等に参加
2016年
モッキンバード・ファミリー・ジャパン事業実行委員会設立 ・モッキンバードソサイエティのディレクターを含めたスタッフ3名を日本に招聘 ・東京、水戸、大阪で講演会を実施 ・来日メンバーと複数地域の自治体職員、厚生労働省、日本財団等との会合
2017年
6月に「里親家庭を活用した子育て支援の仕組みについて考える勉強会」を開始 ・年度内に5回の勉強会を開催 ・モッキンバードファミリーモデル事業実行委員会は、メンバー同士の会議を継続して実施
2018年
8名がシアトルでモッキンバード・ファミリー™の集中研修を受ける ・研修を受けたメンバーは、帰国後、地域でモデルの実践に向けて活動を開始 ・IFCA がモッキンバード・ソサエティと正式に契約を交わし、日本へのモデル導入のためのライセンスを取得 ・9月に東京で、米国での研修についての報告会を開催
2019年
モッキンバードファミリーモデル事業実行委員会は、モッキンバード ・ファミリー・ジャパン (MFJ) と改名し、札幌市、東京都、相模原市、福岡市の4地域で、パイロット・プロジェクトを開始した。
モデル実施地域で選ばれたホスト・エージェンシー(専門機関)は、里親グループの支援体制を整えた。
2020年
新型コロナウイルス感染危機の影響下にあり、地域のハブ・ホームと地域の里親は、創意工夫しながら連携し、支援体制を保った。
各里親グループごとに作成した「モデル実践の計画書」の中に、定期的および緊急レスパイトの実践についても目標値を掲げた。
2021年
前年に引き続き、全国の里親たちが集まるMFJ月例オンライン会議では、白川美也子先生(児童精神科医・IFCA臨床ディレクター)のコンサルテーションのもとに、養育についてのテーマを持ち寄り、活発なディスカッションが行われた。
この年から、新しい地域を開拓し、モデルを活用したいくつかの里親グループを形成する計画が進んだ。
2022年
5月に札幌市と福岡市で、ハブホームとリエゾン(専門機関)の合同研修を実施。 12月福岡市でのJaSPCAN全国大会において、IFCA が前夜祭イベントの一つとしてワークショップを開催し、モッキンバード・ファミリーの里親が米国講師とユースメンバーとともに登壇した。
また同大会では、福岡市のモッキンバード・ファミリー・チームが中心となり、リエゾンをつとめる里親支援専門相談員のモデル維持と養育支援における貢献と可能性についてのワークショップを行った。
2023年
COVID19の影響下から解放され1年以上が経過し、全国の新しい地域から、モデル導入に関する問い合わせが届くようになった。この年の12月から定期的なMFの基礎講習を開始した。
全国の里親たちが集まるMFJオンライン会議では、白川美也子先生のコンサルテーションによるトラウマインフォームドケアを用いた養育についてのレッスンが継続的に提供された。
2024年
栃木県に新しいコンステレーションが構築された。
3月に福岡市で白川美也子先生によるTF-CBTイントロダクトリー・トレーニングが実施された。2日間講習の1日目は地域の里親や児童福祉関係者も参加する、日本では初めての試みが実践された。