インターナショナル・フォスターケア・アライアンス

日米の社会的養護の当事者 – アメリカのフォスター・ユースの現状

毎年、2万人以上のフォスター・ユースが法的な年齢に達したという理由で、18歳でフォスターケアを離れる。これは日本でも、アメリカでも共通して言えることだが、ふつうの青少年が18歳になったとたんに親元を離れて自立することは容易ではない。親や、頼れる大人の助けがないフォスターユースたちが、単に18歳という「法的な年齢」でシステムを追われることの非現実さに、たくさんの人たちが注目し始めたのは80年代だった。1986年、アメリカ連邦政府は社会保障法を改正して、フォスターユースを支援するための予算、自立支援プログラム(ILP)を確立。独立のための様々なサービスを提供し始めた。 ユースたちひとりひとりにケースマネジャーがついて、学業の終了や就職の進路指導をし、アパート探しや家計簿の付け方など、一人暮らしのための知恵とスキルを指導した。このILPは1999年にさらに拡張され、21歳までのユースへのサービスを保障した。多くの州が、トランジショナル・ハウジングというプログラムをとおして、ユースの自立のためのアパートを提供するようになった。それにもかかわらず、フォスターユースたちの実態を知らせる調査報告は、現在でもわれわれに深刻な問題を差し出している。ひとつの統計を例にとってみても、ティーンの里子たちは17歳の時点で中学校一年生ぐらいの読解力しかない。3割以上が高校中退。定職があるのは4人に1人だけ。女子の2人に1人、男子の4人に1人が政府から給付金を受けている。そして1割以上がホームレス、2割が逮捕歴あり、という結果である。 幼少の里子たちは、1年から2年の間に親元に戻されなければ、養子縁組や後見人などの制度を使って、里親や親族に永久的にケアされる。年長の里子たちに決定的に不足しているのが、このパーマネンシー*である。まず、12歳を過ぎると、養子縁組をされるチャンスは半減する。年長のユースたちも小さな里子たちと同じように、自分を見守り、愛情を注いでくれる、永遠的な人間関係と家庭環境を望んでいる。「フォスターユースたちにパーマネンシーを」というスローガンを掲げて、近年、十代の里子たちにも養子縁組や後見人を推進する動きが全米に広がった。前述したように、サポートなしにシステムを離れて、失業したりホームレスになったり犯罪に走るユースがあまりにも多いためだ。 カリフォルニア・ユース・コネクション(CYC)はフォスターユースとその擁護者からなる団体で、会員たちはロビイストとして政府に直接働きかけて、フォスターユースに関する政策の開発と法律の改正を目的に運動を続けてきた。下院法案1412も彼らの生み出したカリフォルニアの州条例だ。これは、もしもフォスターユースにアダプティブ・ペアレント(養子関係の親)が見つからない場合、最低限、そのユースにひとりの確実で持続性のある関係を今後保っていける大人、信用の持てる大人の援助なしには、ソーシャルワーカーはが子どもをシステムから正式に切り離すことができなくするものだ。この法案は州知事によって2005年に調印され、彼らはその後も次々に、ユースの権利や生活向上のための法案を可決させていった。CYCの活動を手本にして、各地で18歳を目の前にするユースたち、また成人した元ユースたちが結集し、自らの自立のための活動を展開している。 この数年、ゲイやレズビアンのフォスターユース(LGBTQ)の擁護の問題が、大きく取り上げられるようになった。ゲイやレズビアンの里子たちは、学校やコミュニティーで差別的な扱いを受け、暴力を振るわれるだけではなく、里親家庭などを不当にも追放されている事実が明るみにでたからだった。彼らの安全な環境と権利を保障するソーシャルワークの実践が、これからの課題になるだろう。 *パーマネンシー(パーマネンシー・プランニングともいう。):里子が施設を長年にわたって転々としないよう、一定の期間内に親と安全に暮らせるようにするための計画。同時に、親元に戻れる見込みのない里子に対し、安定した恒久的な家庭環境、たとえば養子縁組や後見人などを与えること。安住のためのプラン。(IFCA編集部)