日米の社会的養護の当事者 – 日本の社会的養護の当事者の状況
様々な理由から、実親が家庭で子どもを育てられない場合、国や公共団体がかわって子どもを養育する仕組みを「社会的養護」とよんでいるが、その言葉は、必ずしも日本の社会一般に浸透していないしているとは言えない。そのひとつの理由理由の一つは、要保護児童は20歳以下の人口の、0.2パーセントに過ぎないからだ。日本では子どもの数が減っているのに、要保護児童は虐待の増加にともなって、増え続けている。要保護児童のうち、いわゆる身寄りのない子どもは全体の1割から2割に過ぎず、残りのほとんどの児童が保護者の経済的困窮や病気、虐待などの事情で保護されている。
現在日本は約4万5千人の要保護児童がいる。そのうち、里親家庭で育っている子どもは3,876人(平成23年調べ)と、全体の1割にも満たない。保護を必要とする子どもたちのほとんどが、乳児院、児童養護施設などの施設で暮らしている。なかでも、2歳から18歳までの子どもたちを養育する、児童養護施設に入所している子どもたちの数が最も多く、34,522人が現在の定員数である。現在、全国に585箇所の児童養護施設があるが、その7割が大舎型とよばれる、20人以上の子どもたちが暮らす施設である。100人以上の規模の施設も有る。施設にいられるのは原則的には18歳まで。ただし、高校や専門学校に進学しない子どもたちは、15歳で退舎せざるを得ない現状がある。
こうした若者たちを支えるために、自立援助ホームが全国各地に広まった。1950年代に働く青年のための施設を設置したことが発端だったが、自立援助ホームは1998年の児童福祉法の改正で児童自立生活援助事業として法制化し、国の経済的援助を受けるようになり、現在では82ヶ所の自立援助ホームが有る。ホームを利用するのは15歳から20歳までの若者たちで、入居時に、利用者とホーム長が契約を交わす。契約ではホームの利用者は、就労し得た収入から月額3万円から5万円を支払う。自立援助ホームの利用期間は6ヶ月から2年と、個人差がある。
日本では、2000年以降、全国各地で社会的養護の当事者運動が生まれた。里親家庭や児童養護施設で育った若者たちが中心になって活動する団体だ。施設出身者が単に、集まり交流を求める場所だけではなく、家族資源を頼ることのできない若者たちのつながりを創り、子どもの権利や社会的養護の本当のあり方についての、社会的啓発も行っている。
日本でも米国と同じように、大人になりきれない状態で自立を強いられる現実は、不安定な環境で育ってきた若者たちにより一層の不安や困難を課すことになる。施設出身者の大学進学率は10パーセントという統計が出ている。施設退舎後に子どもの相談にのれる人が圧倒的に不足しており、就職や住宅支援が大きな課題になっている。(IFCA編集部)